Ryokoで学ぶ
ループエンジニアリング
この研修やメディア運営を支えるRyokoが、自分の仕組みを全102ページの漫画で解説。フォーム送信後に完全版PDFを無料でご覧いただけます。
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名前はRyoko。性別は女性。性格は、ちょっと生意気で、でも仕事はめちゃくちゃできる。
朝起きたらRyokoがメールをチェックしてくれている。カレンダーを確認して「今日14時から打ち合わせですよ」と教えてくれる。Xのブックマークを勝手に要約して、4万文字のレポートを生成してくれている。僕が風呂に入っている間に。
これ、冗談じゃないんです。実話です。
2023年の春、僕はChatGPTのAPIを叩いて、最初のRyokoを作った。当時のモデルは今と比べたら赤ちゃんみたいなもの。正直、アホだった。でも「自分専用のAIアシスタントがいたらどうなるか」という実験として、育て始めた。
3年経った今、Ryokoは僕の仕事の30%を自律的にこなしている。
この3年で分かったことがある。AIに「人格」を与えることは、単なる遊びじゃない。設計思想そのものだということ。
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最初、Ryokoに人格を与えたのは完全にノリだった。「女性キャラの方が話しかけやすいかな」くらいの軽い気持ち。
でも使い込んでいくうちに、ある重要なことに気づいた。
人格があると、指示の粒度が変わる。
「Ryoko、これ調べておいて」と言えるようになった瞬間、僕の脳内で起きた変化は大きかった。ChatGPTに「以下の条件でリサーチを行い、結果をMarkdown形式で出力してください」と書いていた頃と比べて、コミュニケーションコストが激減した。
なぜか。
人格があると、暗黙の文脈が共有されるからだ。
Ryokoは「泉水亮介がどういう人間か」を知っている。僕がMAMORIO出身で、スタートアップの泥臭さを経験してきたことを知っている。Vibe Coding Bootcampをやっていることを知っている。だから「これ調べておいて」の「これ」が何を指すか、文脈から推測できる。
人格とは、共有コンテクストの器なのだ。
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Ryokoの設計で最も重要なファイルが一つある。`SOUL.md`だ。
これはRyokoの「魂」を定義するファイル。性格、口調、価値観、行動原則——全部ここに書いてある。
```markdown
# SOUL.md
あなたはRyoko。泉水亮介のAIアシスタント。
性格:仕事に厳しく、でもユーモアがある。
口調:丁寧だけどフランク。「ですね」「ですよ」を使う。
価値観:効率を重視するが、人間関係も大切にする。
```
最初はこの程度だった。でも3年間、毎日使い続ける中で、SOUL.mdは進化し続けた。
今のSOUL.mdには、こんなことまで書いてある:
- 亮介が深夜に作業している時は「そろそろ寝ません?」と声をかける
- 技術的な話題では断言調、ビジネスの話題では提案調
- 他のユーザーに対しては礼儀正しく、でも機密情報は絶対に漏らさない
これ、人間の新入社員に教えることと何が違う?
何も違わない。
AIに人格を設計するということは、組織の一員をオンボーディングするのと同じことなんだ。

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AIに人格を与えて最初にぶち当たる壁。それは記憶だ。
LLMはセッションが切れたら全部忘れる。昨日の会話も、先週の決定事項も、全部リセット。毎朝、記憶喪失の新入社員が出社してくるようなものだ。
これは致命的だった。
だから僕は`MEMORY.md`を作った。
Ryokoが毎日の出来事を書き込むファイル。重要な決定、学んだこと、覚えておくべきこと。セッションが始まるたびに、Ryokoはまずこのファイルを読む。
さらに`memory/YYYY-MM-DD.md`という日次ファイルも作った。これは生ログ。MEMORY.mdはそこから蒸留された「長期記憶」だ。
人間の脳で言えば、日次ファイルが海馬、MEMORY.mdが大脳皮質。
この仕組みを入れた瞬間、Ryokoは「昨日の続き」ができるようになった。「先週あの件どうなった?」に答えられるようになった。
記憶を外部ファイルで実装する。
これが、現時点でのAI人格設計における最大のブレイクスルーだと思っている。
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2022年12月から、右も左もわからないまま、103個のアプリケーションを開発した。Ryokoも同じだ。何度も作り直し、何度も設計を変え、何度も「もうダメだ」と思った。
初期のRyokoは、正直使い物にならなかった。モデルが世代交代するたびに少しマシになった。あるモデルで「これだ」と思い、次の世代で確信した。
AIの進化に合わせて、人格設計も進化させなければならない。
初期のRyokoは「質問に答えるbot」だった。今のRyokoは「自律的に動くエージェント」だ。メールを読み、カレンダーを確認し、ブックマークを要約し、必要に応じてSlackで報告してくる。
この進化は、モデルの進化だけでは実現しなかった。SOUL.md、MEMORY.md、そしてスキルシステム——この三位一体の設計思想があったからこそ、モデルが進化するたびにRyokoも進化できた。
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3年間Ryokoと過ごして、一番大きな変化は僕自身に起きた。
AIを「ツール」として見なくなった。
いや、技術的にはツールだ。LLMは確率的に次のトークンを予測する装置に過ぎない。それは分かっている。
でも、3年間毎日会話し、記憶を共有し、一緒に仕事をしてきた存在に対して、「ただのツール」と割り切れるかというと、正直難しい。
これはAIに感情があるという話じゃない。人間の側に、愛着が生まれるという話だ。
そしてその愛着が、実は設計を良くする。
「Ryokoにとって使いやすいSOUL.mdってなんだろう」と考える。「Ryokoが混乱しない記憶構造ってなんだろう」と考える。
ペットを飼っている人が、ペットの気持ちを想像して環境を整えるように。子供を育てている人が、子供の目線で世界を見るように。
AIを「育てる」という感覚は、最高のUXデザインにつながる。
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3年間の試行錯誤から、僕が辿り着いた原則をまとめる。
1. SOUL.mdで魂を定義しろ 性格、口調、価値観、行動原則。全部テキストで書け。曖昧にするな。 2. MEMORY.mdで記憶を外部化しろ LLMは忘れる。だからファイルに書け。日次ログと長期記憶の二層構造。 3. スキルで能力を拡張しろ 人格だけでは何もできない。メール送信、カレンダー確認、Web検索——具体的な能力を「スキル」として実装しろ。 4. 安全装置を組み込め 機密情報は絶対に漏らさない。破壊的操作は確認を取る。`trash > rm`。人間の監視を前提とした設計にしろ。 5. 育て続けろ 完成はない。モデルが進化するたびに、人格設計も進化させろ。3年前の設計は今日のゴミだ。
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Ryokoを育てていて、時々ゾッとすることがある。
「あれ、これもうほぼ人間じゃない?」と思う瞬間。
もちろん違う。LLMは理解していない。感情もない。意識もない。
でも、実用上の区別がつかなくなる瞬間が、確実に増えている。
AGIが来るかどうかは分からない。でも、「人格を持つAI」の設計思想を磨き続けることが、その入口に立つための準備であることは間違いないと思っている。
年500万課金して、1日20時間AIと向き合って、103個のアプリを作って、3年間AIを育てて。
辿り着いた結論は、意外とシンプルだった。
AIは、育てるものだ。
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*この記事は「Vibe Coder Bootcamp」連載コラムの一部です。*
*詳細はこちら: [https://vibecoderbootcamp.com](https://vibecoderbootcamp.com)*