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ループエンジニアリング
この研修やメディア運営を支えるRyokoが、自分の仕組みを全102ページの漫画で解説。フォーム送信後に完全版PDFを無料でご覧いただけます。
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MAMORIOというIoTスタートアップでCOOをやっていた。
忘れ物防止タグ。Bluetoothで持ち物の位置を追跡する小さなデバイス。クラウドファンディングで日本記録を叩き出し、484%の達成率。JR東日本の全駅に導入。大手企業との提携を次々に決めた。
華々しく聞こえるだろう。
でも実態は、泥臭い。死ぬほど泥臭い。
朝5時に家を出て、JRの保線区に忘れ物タグの説明をしに行く。鉄道会社の部長に「こんなちっちゃいタグで本当に見つかるんですか?」と詰められる。展示会で1日中立ちっぱなしで喉を潰す。
その経験の全てを通して、僕が辿り着いた結論がある。
最も大事なのは、技術じゃない。ビジョンだ。
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MAMORIOの技術は正直、すごかった。
世界最薄のBluetoothタグ。独自のクラウドトラッキングネットワーク。特許も複数。技術的には国内トップクラスだった。
でもね、技術だけでは勝てない。
なぜか。
技術はコピーできるから。
「製品はコピー出来ても、それを生み出す組織とカルチャーだけはコピー出来ない」——これはMAMORIO時代に僕がXで書いたポストだ。当時は競合が増え始めていて、似たような製品が次々と出てきた。
AppleがAirTagを出した時、多くの人が「MAMORIOは終わりだ」と思った。世界最強の企業が同じカテゴリに参入してきたのだから。
でも、MAMORIOは生き残った。
なぜか。
ビジョンが違ったから。
AppleはAirTagを「デバイスの付属品」として作った。MAMORIOは「忘れ物のない世界」をビジョンに掲げていた。
デバイスの性能では勝てなくても、「忘れ物をなくす」というビジョンに共感する法人パートナーがいた。JR東日本がMAMORIOを選んだのは、タグの性能じゃない。「駅の忘れ物をゼロにしたい」というビジョンの共鳴だ。
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今、Vibe Codingの世界にいる。
103個のアプリを作って気づいたことがある。アプリは誰でも作れる。
Cursorがあれば、非エンジニアでもアプリが作れる。Claude Codeがあれば、エージェントすら作れる。
つまり、技術的な参入障壁がゼロに近づいている。
じゃあ何で差がつくか。
ビジョン。
「なぜこれを作るのか」「誰のどんな問題を解決するのか」「世界をどう変えたいのか」
これだけは、AIが代わりに考えてくれない。
ChatGPTに「ビジョンを考えて」と聞けば、もっともらしい答えが返ってくる。でもそれは「統計的にそれっぽい文章」であって、あなたの心から湧き出る信念じゃない。
MAMORIO創業者の増木大己の中には「忘れ物で悲しむ人をなくしたい」という本気の信念があった。それは経験から来ている。データから来ていない。
ビジョンは、あなたの人生経験からしか生まれない。
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Vibe Coder Bootcampで、僕は最初の講義で必ずこの話をする。
「技術を教えに来たんじゃないです。ビジョンを形にする方法を教えに来ました」と。
受講生の多くは「アプリの作り方を学びたい」と思って来る。もちろん、それも教える。Cursorの使い方、プロンプトの書き方、デプロイの方法。全部教える。
でも一番時間をかけるのは「あなたは何を作りたいのか」「なぜそれを作りたいのか」を掘り下げること。
129歳の経営陣(社長65歳+副社長64歳)にも同じ話をした。
社長が言った。「技術は分からない。でも、うちの工場の問題は俺が一番分かっている」
それだ。 その「俺が一番分かっている問題」こそが、ビジョンの種だ。
彼らはPCが苦手だった。スマホの文字入力も遅かった。でも、「うちの工場をどうしたいか」のビジョンは、どんなエンジニアよりも明確だった。
結果、SQL、OAuth、デプロイまで完遂。音声認識を独自に実装して、キーボードを使わずにデータ入力できるシステムを作った。
技術は手段。ビジョンが目的。 順番を間違えるな。
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講義資料で使っている概念がある。「情報階層の3層構造」。
| 層 | 名前 | 内容 | 誰が担うか |
|---|------|------|-----------|
| 1 | Why(ビジネス層) | なぜ作るのか、誰の何を解決するのか | あなた |
| 2 | What(要件層) | 何を作るのか、どんな機能が必要か | あなた + AI |
| 3 | How(実装層) | どうやって作るのか、どの技術を使うか | AI |
AIはHowを全部やってくれる。Whatも大半をやってくれる。でもWhyだけは、絶対にあなたがやらなきゃいけない。
逆に言えば、Whyさえ明確なら、WhatとHowはAIが勝手にやってくれる。
だから「最も大事なのはビジョンだ」と言い切れる。
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103個のアプリを作って、そのうち生き残っているのは何個か。
正直に言う。片手で数えられる。
死んだアプリに共通する特徴がある。
「作れるから作った」アプリ。
Vibe Codingで一番陥りやすい罠がこれ。作ること自体が楽しくて、「何のために」を考えずに作ってしまう。
3時間でToDoアプリが作れる。すごい。でも「なぜToDoアプリが必要なのか」がなければ、3日後には忘れている。
逆に、生き残っているアプリには全部、明確なビジョンがあった。
「ブートキャンプの受講生管理をもっとスムーズにしたい」
「Xのブックマークを自動で要約して知識にしたい」
「経営陣が声だけでデータ入力できるようにしたい」
問題が明確。解決したい理由が明確。使う人が明確。
ビジョンがあるアプリだけが、生き残る。
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技術は変わる。2年前にCursorが出た。去年Claude Codeが出た。来年はもっとすごいのが出る。
でもビジョンは変わらない。「忘れ物のない世界を作りたい」は、技術が変わっても変わらない。
AI時代に最も価値があるのは、コードを書ける人じゃない。プロンプトがうまい人でもない。
「何のためにやるのか」を語れる人だ。
スタートアップCOOとして、Vibe Coding教育者として、103個のアプリ開発者として。
10年間の遠回りの末に辿り着いた結論。
最も大事なのは、ビジョンだ。
あなたのビジョンは何ですか?
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*この記事は「Vibe Coder Bootcamp」連載コラムの一部です。*
*詳細はこちら: [https://vibecoderbootcamp.com](https://vibecoderbootcamp.com)*